Kafka「世界を燃やしてよ。」 / (Burn down the home)
「わたしがここに連れてこられまだ間もないころの話です。
なんとなく手に取った本の一頁に、こんなことが書いてありました。
言葉で、表情で、態度で、私たちは様々な手法を用いて、お互いがお互いを理解しようと、日々 意思の疎通を図っています。
こうして生じたお互いの価値観や感情は、わたしたちの生活をより補い、より彩っていくものだと、わたしは考えています。
でも、ときにはすれ違ってしまうこともあるそうです。「行き違い」や「不和」と表せるそうです。
わたしたちは、生まれた瞬間から、その身体に炎を宿しています。
その炎はときに足元を照らし、ときに雪を溶かし、ときに誰かの炎をも燃やそうとします。
そうして、長い年限が過ぎたとき、ある日音もたてずに消えてしまうものです。
これらは、わたしたちが根を張る大きな世界の、小さな現象に過ぎません。
ですがわたしは、この現象に、強く惹かれてしまいました。
ここに一つ、 があります。」