まだ書かれていないページ
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午前零時 鐘が鳴ったら
鍵をひとつ くるり回して
「本日の営業は終了です」
……なんてね ここからが本番
誰もいない閲覧室
月明かりだけが常連さん
いちばん奥の本棚が
今夜もそっと息をする
昨日までなかった背表紙
明日のことが書いてあるって
そんな噂を信じるなんて
あなたも案外 かわいいね
ねえ
ちょっとだけなら
覗いてみる?
まだ書かれていないページ
めくれば未来がわかるらしい
恋の行方も 涙の理由も
ぜんぶ先に読めるらしい
だけど最後のページだけ
今夜はそっと閉じておこう
だって知らない物語ほど
続きが気になるでしょ?
La la la…
移動梯子のいちばん上
こっそり禁書をひらいたら
星座みたいな金の文字が
指先から逃げてった
「三年後には何してる?」
「誰の隣で笑ってる?」
知りたいことを並べたら
朝までだって足りないね
でもそのとき見つけたの
見慣れた名前の古い本
金色の文字で
――七瀬こまち。
……え?
まだ書かれていないページ
そこには何が待ってるんだろう
嬉しいことも 悲しいことも
答えはここにあるのかな
一ページ
もう一ページ
指をかければ読めるのに
なぜだろう
急にちょっとだけ
怖くなった
窓辺のホットチョコレート
冷めてく夜を眺めながら
未来を知るのと 未来を選ぶの
どっちが素敵なんだろう
本にはきっと
正解が書いてある
だけど――
正解どおりじゃ
つまらないじゃん
まだ書かれていないページ
だったら私が書けばいい
間違えたって 遠回りだって
消さなくたっていいじゃない
予定調和のエピローグより
予想できない明日がいい
だから最後のページだけは
まだ読まない
まだ書かれていないページ
あなたの本にも残ってる
恋をしたり 夢を見たり
たまに泣いたり 迷ったり
それでもページをめくるたび
昨日になかった文字が増える
ねえ
次のページで会えたなら
そのとき続きを聞かせてよ
午前零時 鐘が鳴る
秘密の書架が消えていく
鍵をかけて
本を抱いて
「本日の営業は終了です」
……あ。
貸出期限?
そんなの――
あなたが続きを書くまで♡
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