風だけ残った。
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鍵の開いた 午後の校舎
靴音だけが 遠く響く
黒板に残る 消えかけの文字
昨日の続きが まだそこにいた
窓辺のカーテン 白く揺れて
誰もいない席を 撫でていく
「取りに来ただけ」って
そう思ってたのに
なぜだろう
帰れなくなった
—
シャッターひとつ
切るたびに
置き去りだった時間が
少しだけ動く
—
シャッターのあとに
風だけ残った
誰もいない教室で
夏の匂いを待ってる
名前のない気持ちを
まだ言葉にできなくて
光ばっかり
写していた
—
音楽室の前に落ちてた
青いヘアピン 拾えなくて
忘れ物には
戻る理由があるって思った
夕焼け混じりの廊下の奥
まっすぐ伸びる光の線
なんでもない景色ほど
ちゃんと寂しい
ファインダー越し
知らなかった
「ひとり」の形を見てた
—
誰もいないのに
気配だけ
ここに残ってる気がして
胸が少し鳴った
—
シャッターのあとに
風だけ残った
静かすぎる校舎には
昨日の熱が眠ってる
言えなかった気持ちも
描けなかった背中も
夕暮れだけが
覚えていた
—
石膏像の白い横顔
使われなかった絵の具の色
途中で終わった会話たちが
光の粒みたいに浮かんでた
屋上前の階段で
青すぎる空を見上げる
「……もう終わりか」
そう呟いた声だけ
少し大人みたいだった
—
シャッターのあとに
風だけ残った
誰もいない学校で
夏が静かに始まっていく
名前なんてなくていい
この瞬間だけでいい
誰にも見せない景色を
今日も ひとりで撮ってる
シャッターのあとに
少しだけ残った
まだ小さな
わたしの季節を
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